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看護・セラピストのための「問題解決」思考法 第1回 認識のズレについて


(キャリエルメディ2022年10月号より)文:樋口直樹



キャリエルメディは医療系出版とセミナーで医療従事者の独立・副業を支援します


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目次

  1. 「問題解決」という言葉

  2. 事例

  3. 二つの視点

  4. 認識のズレ

  5. 「仕組みを知る」


「問題解決」という言葉


「問題解決」という言葉はありふれた言葉であるし、皆さんも意識はしているのではないでしょうか。


例えば、医療従事者であれば患者を取り巻く状況は「問題」だらけであることが多く、それを一つ一つ取り除くことが必要で時間も労力もかかることがすぐにわかると思います。


医療従事者はそういった「問題解決」の専門家ではありますが、意外にもその他の問題、自身の個人的な問題や集団の問題を解決するのが得意というわけではないと感じています。


そういった様々な「問題解決」にはどのような視点が足りず、「解決」までいたらないのでしょうか。


事例

 理学療法士のAさんは、経験年数10年を超え仕事も一人前になってきました。その甲斐あって、今年から回復期の主任として様々な仕事を任されることに。特に力を入れていたのは新人教育で熱心に取り組んでいました。とある日、上司から呼び出され次のように告げられました。「今年入った新人理学療法士Bさんが、あなたの言動や行動に恐怖を感じると言っているのだけれど…」Aさんは、びっくりして詳細を聞いてみましたが、訴えの内容は自分が今まで受けてきた教育的指導の枠内で特に問題は感じませんでした。上司もAさんは問題はないとは思うけれど、訴えがある以上対処するしかないと言われました。Aさんは当面の間、新人教育から外されることになりました。Aさんは、新人Bさんが退職することを聞き、その頃からAさんは少し体調を崩し始めてしまいました。

この事例は最近よく聞く事例です。この事例をあなたはどのように考えますか?


二つの視点


さて、この事例を解決するために、まず二つの視点を持ちましょう。それは「今解決しなければいけないこと」と「過去どのようにすればよかったのか」という視点です。


「今解決しなければいけないこと」はAさんの体調です。もちろん新人Bさんの体調も不安定である可能性がありますが、ここではAさんに絞って考えてみましょう。


新人Bさんの退職は、Aさんのことがどれほど比重を占めるかはわかりません。しかし、重要なのは「Aさんが責任を感じている」ということです。


この「責任」という言葉はやっかいで、Aさんは責任をとって新人教育から外れているので組織的には問題がないように思います。


ただ、Aさんはおそらくそれで済んでいるとは思っていないのではないでしょうか。


この場合の責任は、もはやどうすることもできないものであると思います。


「Aさんが新人Bさんに謝罪する」のはどうでしょうか。新人Bさんはもし許したとして、Aさんはそれですっきりするのでしょうか。


認識のズレ


ここには「認識のズレ」という隠れた要素があることに注目しましょう。


新人教育で自分では問題はないと考えていた内容が拒絶されたわけです。


それは組織内でも問題はないと言われているものでした。それでも、新人Bさんにとっては恐怖を抱くほどの内容であった。


この認識のズレは、Aさんの心の負担を増大させています。


このようなことは経験したことがないでしょうか。例えば、ある有名な漫才コンテストで自分が一番面白いと思ったコンビが優勝できなった。


「こんな審査は間違っている!!」と。相当に腹が立ったあなたはSNSで似たような意見を見つけ「ほら、みんなそう思っているんだ!」と。


ただ、ここで立ち止まって考えてみましょう。


「審査員は少なくとも面白い、あるいは評価できる部分を他のコンビに見出したのだ!」と思うことができれば、この問題を解決する糸口にたどり着くと思います。


ここで重要なのは、他の人が感じた結果そのものは「その人の中では認識のズレがない」ということです。


表出された「結果」を客観的に見てみると、場合によっては「誤解」しているように見えるかもしれません。


また、何らかの理由で意図的に「認識のズレ」を引き起こしているような言動を行っている可能性もあります。その場合も、何らかの自分の利益につながるものがあると思います。


ここで「足りない視点」の中身の一部がわかると思います。


「仕組みを知る」


Aさんは新人Bさんが恐怖を感じたことを事実として一旦受け入れたうえで、新人Bさんについて知る努力を行う必要があります。


Bさんがそのように思うに至った「仕組み」をAさんは解明する必要があるのです。


その際、Aさんが正しい、Bさんが正しいといった価値判断をいったん棚上げできるかどうかがこの問題を解くカギです。


上司は新人Bさんが面接で「幼少期にイジメにあっていた」ことから、少し患者や他のスタッフの言動に敏感であるということを聞いていたかもしれません。このことで、Aさんが行った新人教育時に「このように感じてほしい」という願いと実際の新人Bさんの受け取り方のギャップをAさんが認識できれば、少しAさんの心が軽くなるかもしれません。


このように考えるのは、人は「認識のズレ」を解消できないままに健全な心の状態を保つことが難しいからです。そうでなければSNSで自分の認識の正しさを主張したり確認したりすることが一般化しないはずです。


もしかすれば、Aさんは新人教育に取り掛かる前に、それぞれの新人の特徴をもっと調べる必要があったかもしれません。ただし、これは前に述べた視点を持ち合わせないと単なる情報としてあるだけで活用はできなかったでしょう。


このように、問題解決にはある種の「思考法」が存在します。このような思考法は「現象学」として知られるものであり、皆さんがこのような「思考法」を身に着ける手助けをここでは書きたいと思います。


今回は個人的な問題にフォーカスを当てましたが、次回は組織としての問題を解決するにはどのような思考法が必要なのか?です。


樋口直樹(ひぐちなおき)大学講師を経て出版プロダクション・コーチングサービスなどを手掛ける。近著は「脳卒中後の構音障害への徒手的アプローチ」


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