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特集:独立看護師「独立看護師として生きていく」小川彰さん(独立看護師)インタビュー


(旧キャリエル看護※現キャリエルメディ2022年8月号特集「独立ナース!」より)取材:小見田りり子 構成:梶原拓真


小川彰(おがわあきら)
中央大学商学部卒業後、金融機関勤務を経て、2004年に看護師免許取得。2013年に脳卒中リハビリテーション看護認定看護師を取得し、看護学校等での講義を担当する傍ら、Excelを活用した院内の認定看護師のための業務報告システムを構築するなど活動は多岐にわたる。2021年東京都立大学大学院にて看護学修士を取得。2019年から独立看護師として活動中。


キャリエルメディは医療系出版とセミナーで医療従事者の独立・副業を支援します。


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目次

  1. 独立した理由とは

  2. 情熱を持って

  3. ポートフォリオを自ら決める

  4. 認定看護師として

  5. 独立看護師として

  6. 未来に向かって


独立した理由とは


ーはじめに、独立して看護師として仕事をしていこうと思った理由を教えてください。


小川 僕は長女と長男の子育てをしながら看護師として勤務していました。当時は2交代勤務だったので、家にいる時間や出勤が遅い日の前夜に役割を担うことが多かったです。


妻が自営業でしたので、保育園からの呼び出しや休園時の育児などを率先してやってくれていました。


しかし、その状況に甘えている自分が嫌でストレスを感じることが多かったです。職場の上司も「奥さんは休めないの?」が第一声だったこともストレスでしたね。


ー確かにそれはストレスですね。他に理由となるエピソードはありますでしょうか?


小川 職場まで2時間超かけて通勤していたことも理由の一つです。定時で帰れたとしても17時15分が終業で、自宅に帰れるのは19時半から20時になってしまいます。


子どもが小学生に上がり、学童へ通うようになってからは、保育園よりも迎えの時間が早くなり、時間的に厳しくなっていきました。


また、勉強の復習や習い事の練習など、1日4時間の通勤時間をかけていては子どもとの時間を取れなくなってしまいます。子どもと関わる時間を確保するために、職場を辞めようと思ったのが理由です。


情熱を持って


ー独立した仕事に至るまでの、特に病棟での活動はどのようなものであったでしょうか。


小川 認定看護師になる前に、フットケアについて熱心に勉強していた時期がありました。


酷い巻き爪は看護師でも手が出せないケースもあり、喜ばれる機会は多かったです。「爪切りの小川さん」なんて呼ばれて、別の病棟に呼ばれることがありました。


ー小川さんにとってやりがいのある仕事だったわけですね。


小川 そうなんです。ただ、新しい看護師長が赴任したことで爪を見る時間が取りづらくなってしまい、自分の業務内容が突然変わってしまう可能性があることを体感しました。


認定看護師になっても同じようなことがありました。


当時、病棟の環境改善や院内教育活動をする中で主体的にスキルアップを図っていました。ところが、新年度の人事異動で行っていた活動を終了するように告げられたのです。


この時、自分が取り組みたい専門的な仕事と組織が僕に求める姿で乖離があることに気付き始めました。


そこで、専門職として自分が情熱を持って取り組める仕事を続けたいと強く思ったんです。



ポートフォリオを自ら決める


ー小川さんは専門職として取り組む上で自身の軸にしたい仕事はありますか?


小川 最も大切にしたいのは講師業ですね。看護学生時代にアルバイトでしていた塾講師が原体験となっています。


アルバイトとはいえ仕事ですから決して楽ではありません。授業時間の何倍も準備の時間がかかり、自宅でも授業の準備をしていました。


時間をかけることは苦痛ではありません。「どのように説明をしたらわかりやすいか」と何度もシミュレーションをしました。 


授業で実際に講義をすると、生徒が楽しそうに授業を受けて成績が伸びていく。なんて楽しい仕事なんだろうと人生の中で「これは自分の天職だ」と感じた瞬間でした。


そのため、病院勤務時代から研修講師を担当したり、看護学校で講義をしたりと、講師業は自分の軸となる大切な活動として位置付けられています。


看護師は比較的転職をしやすい職業です。転職を考えた際に「自分のポートフォリオ(自身の実績等をまとめたもの)を自身で決められるか」が判断基準になりました。


また、簿記の資格を持っていて自身でも帳簿が付けられる点も独立する決意を固める要因でもありました。


ー病棟勤務を行いながら講師を行うことへの病院の理解はどうだったのでしょうか?


小川 当時の看護部長が、院外での活動に関してとても理解のある方だったため、私の希望を伝えたところ看護学校の講義依頼を私に紹介してくれたんです。


当然、通常の看護業務とは別に時間を割く必要がありましたが、今の活動にも繋がる貴重な経験をできたと思っています。


ー院外での講義以外にも取り組んでいたことはありますか?


小川 院内では、新しく創設された専門的な研修コースの運営を任されることになりました。


看護師長や看護部長にたくさんの助言をもらいながら、研修運営を学ぶ機会を得られる貴重な経験でしたね。


院内研修の講師は医師やセラピストにお願いする以外は、自身で担当することが多かったです。そのため、ファシリテーションやプレゼンの技術などはこの機会に磨かれたのだと思います。


認定看護師として


ー研究活動はどのような内容だったんですか?


小川 日本脳損傷者ケアリング・コミュニティ学会の「主体性研究会」や「背面解放座位」を診療報酬化する取り組みに関わっていたんです。


研究は認定看護師の自己研鑽ポイントとして計上されますし、上司や職場に良いアピールの手段でもありました。


ーということは、研究に関してもすぐに取り組んでいたんでしょうか?


小川 いいえ。認定看護師教育で「研究」はほとんど学ぶ機会がないんです。


そのため、尺度分類や分析方法などは助言を受けながら研究を進めていました。


研究自体はやっていて楽しかったですし、むしろ性にあっていたんだと思います。メンバーとディスカッションしながら思考を巡らせる時間は、とても充実していましたね。


さらに、同じ病院に勤めていた専門看護師から大学院に行ってはどうかと勧められ、東京都立大学の大学院を受験しました。


大学院では無事2年の修士課程を修了でき、そこで出会った仲間は今でも自分にとって大きな財産になっています。


ー認定看護師の関連で活動の幅が大きく広がっていますね。


小川 そうですね。研究活動だけでなく認定看護師の自己研鑽ポイントには、社会活動も含まれているんです。


2016年に参加した日本脳損傷者ケアリング・コミュニティ学会の準備委員会がその一つです。


学会運営には障害当事者や家族が多く関わっており、「退院した患者さんは幸せに暮らせているのか」という疑問の答えが見つかるかもしれないと感じ、学会活動に加わることにしました。


準備委員会の会合は様々な立場の人が20人前後集まり、同じテーブルでディスカッションして内容を詰めていきます。その会合で、私の考え方に興味を持ってくれた理事長や理事の方がいて、所属する法人の理事に迎え入れてくれる機会もいただきました。


この活動は基本無報酬で収入の軸にならなかったのですが、やりたいことをやらないと後悔すると思い取り組んでいました。結果、ステキな出会いにも恵まれています。


独立看護師として


ー独立する際に個人事業主の屋号はどのように設定したんですか?


小川 屋号は、モチベーション研究開発を略して「モチケン」としました。


講師業や研修で学ぶ意欲を高めることを目的としています。そのため、わかりやすく教えることはあくまで手段でしかありません。


どのような授業スタイルや内容にすると学生のモチベーションを引き出せるか、実践しながら学生たちの能力を開発するという意味を込めて命名しました。


ー自身の軸に講師業を据えていますが具体的にはどのような活動をしていますか?


小川 病院勤務時代から継続して、都立の看護学校で非常勤講師をしています。当初は認定看護師の資格を活かして脳卒中やリハビリテーションの科目を担当していましたが、独立を機により多くの授業を任せていただいております。


さらに、校内演習の指導で日常生活の援助などの内容についても追加して依頼をいただきました。


ーそうなると、講師業は概ね順調ですか?


小川 全てが順調というわけではありません。


新型コロナウィルス感染症の影響で、予定していた大学の講義依頼はなくなってしまいました。しかし、専門学校の講義は年々増えています。


また、都立の看護学校では教員の異動があり、異動先の学校から講師に呼んでいただけることもあります。


未来に向かって


ー小川さんの個人事業として、プレゼンテーション・サポートがありますよね。こちらはどういった内容なんですか?


小川 私もそうだったんですが、パワーポイントについて教えてもらう機会は本当に少ないです。


特に、よりわかりやすく見せる技術についてはなかなか教えてもらえません。


しかし、看護師は病院での勉強会や学会発表などでプレゼン内容を考え、資料を作成し発表する機会に遭遇します。そんな方のサポートができれば、発表者も助かるばかりでなくプレゼンテーションを受ける人たちのメリットにも繋がると考えました。


150回を超える講義の経験から得た知識をピンポイントでお届けできれば、業界全体のレベルアップに繋がるのではないかと考えています。


新人の看護教員や新規事業を立ち上げる方が主なクライアントで、資料作成を一緒にやってほしいという要望にも答えています。


ー最後に、小川さんの今後の計画や展望についてお聞かせください。


小川 都立看護専門学校は都内の7校のうち3校から仕事をいただいています。現在担当できるコミュニケーション論、情報科学については、他の学校でも依頼があればお受けしたいです。


正しい知識や正解が常に変化する時代で、教育者が現時点での定義や方法論を教えるだけで満足してはいけないと思います。


インターネットで調べれば大抵の知識が分かる時代だからこそ、どのような知識が必要で、どこを探せば見つかるのか理解していることが重要だと考えています。そのため、学生がよりよく学ぶために学内の先生方と情報共有をし、共通の問いに対してコラボレーションしていきたいです。


ー個人事業の方はいかがですか?


小川 プレゼンテーション・サポートは継続していきます。


例えば、看護教員になる方は強い情熱を持っている方が多いです。ただ、PCやICTに触れてこなかった方が一定数います。その方々を支援する体制は整っていないためオンラインでのやり取りでプレゼンテーションのサポートを実施しています。


これまで支援してきて感じたことは、全く同じ悩みや課題を持っている方はいないということです。それぞれ人間的な特性が違うため、プレゼンテーションの内容や方法も変わってきます。


その人らしく生き生きとプレゼンテーションすることと、上手な人の真似をするのではまったく違うんです。


そのため、実際の指導は1体1のスタイルを守って行っていきます。


お互いのプレゼンテーションを発表し合う「プチ発表会」なんかもやっていますので、お気軽にお問い合わせください。


https://motiken.com/

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